Progress Report 1:未通海女哭虐~裸の昼と縄の夜



 細かく章分けしたのは失敗だったかなとも思ったりします。
 一場面ずつを見出にすると、細かくなりすぎます。が、まあ、このスタイルで最後まで書きましょう。失敗だと判断したら、次から元に戻すだけです。


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見習海女は裸
・鬼伯母の棲まう島
・便所も風呂も浜辺
・食事の作法も屈辱
・十五年ぶりの見習
・実核を括る色付紐
・漁師へのお披露目
・苛酷な素潜り練習

「ここらでいいだろう」
 三十分ほども漕がされてから、やっと伯母が声をかけてくれた。身体じゅうが悲鳴をあげていたし、手の平はまっ赤に腫れていた。
 他の小舟は、ずっと沖合で頭を出している岩のまわりに集まっている。あの下に魚貝類が群れているのだろう。
 伯母が、先ほどの赤い牛乳瓶を遠くへ投げた。
「お手本を見せてやる。そこの箱メガネで覗いてな」
 底辺が二十センチ四方の素通しの箱に、ガラス板が嵌められている。手に持つ水中メガネだった。
 伯母は舟べりに後ろ向きに腰掛けると、何度か深呼吸をしてから、くるんとトンボを切って海に潜った。
 箱メガネで見ていると、斜め下に向かって平泳ぎで進んでいる。その先に赤い牛乳瓶が見えた。伯母は水中に浮かんだままそれを拾ったが、すぐには上がってこない。余裕を見せつけて、海底すれすれを十メートルほどカエル足だけで泳ぎ、それから縦に反転して舟の真下まで来た。そして、海底を蹴って一気に浮かび上がる。
「ヒュウーイイイイ」
 悲鳴とも口笛とも違う、甲高い細い声が伯母の口から漏れた。太く息を吐くと喉を傷めるので、口をすぼめて細く強く吐き出す。それが自然と音になる。いわゆる磯笛だ。これが吹けないと一人前の海女とは認められない。
 伯母は舟を大きく揺らして、その反動を利用して身体を引き上げた。また遠くへ牛乳瓶を投げて。
「やってみな」
 無雑作に言う。
 久美子は船べりから身を乗り出して、片足を海に浸けようとした。ぐらりと小舟が傾いて、バシャンと投げ出された。
「きゃ……」
 小さく叫んだ口に海水が押し入って、久美子はむせた。
「なにやってんだい。深呼吸で肺に空気を溜めて――そうそう。さあ、潜りな」
 久美子は息を整えてから、頭を海に突っ込んで水を掻いた。けれど、ちっとも沈んでいかない。頭を水に突っ込んで、お尻を海面から突き出して、ジタバタもがいているだけだった。
「しょうがないねえ。いったん戻りな」
 それもひと苦労だった。舟べりにつかまって身体を引き上げるのだが、舟が傾いて振り落とされてしまう。久美子は、伯母のやり方を思い出した。体重を掛けて舟を傾けてから身体を沈め、舟べりが高く上がったところで、水を蹴りながら一気に腕を縮めた。身体が上がり、舟べりが下がる。久美子は舟底に転げ込んだ。
 伯母が海女桶の底から鎖を取り出した。
「おまえには、こっちのほうが似合いだね」
 晒し布の帯をほどかせて、腰に鎖を巻きつけた。後ろで両端を引き違えて、長い綱の先に着けてある金具で留めた。
「これでよし。ちゃんと拾うまで、引き上げてやらないからね」
 鎖は、ずしりと腰に思い。
 久美子は今度は伯母のように舟べりに腰掛けてから、トンボを切って海にはいった。背中から落ちたけれど、意に反して投げ出されたのではなかった。トンボの勢いで、自然と頭が下向きになった。
 さっきの悪戦苦闘が嘘のように、ぐんぐん沈んでいく。手足で水を掻く必要もないくらいだ。これでは、海面に向かって泳いでも浮かび上がれないかもしれない。伯母の矢継ぎ早の指示がなくなったし、海の中で裸でいるのは羞ずかしいことではない。心に生まれた隙間に、恐怖が押し入ってきた。
 それを払いのけて、久美子は海底を見通した。水に遮られて、視界はぼやけている。箱メガネで覗いていたときは舟の上からでも見えていた赤い牛乳瓶が、どこにも見つからなかった。
 海底に頭からぶつかりそうになったので両手を突っ張って、身体の上下を変えた。海面を見上げると、意外にくっきりと舟影が見えた。細い綱が緩く弓のようにたるんで、自分の腰まで伸びている。
 潜ってから、せいぜい二十秒かそこらだろうが、もう息が苦しくなってきた。一度浮上して箱メガネで、およその方角を確認しようと考えた。舟影は前が尖っているから、牛乳瓶がどこらにあるかが海底でもわかる。
 久美子は海底を蹴って、上に向かって平泳ぎを始めた。ひと掻きで身体半分くらいは進む。けれど、手足を縮めているあいだに、鎖の重みで沈んでしまう。力いっぱい泳いでも、海面はなかなか近づかない。
 じきに、胸と頭が痛くなってきた。手足に力がはいらない。そして。蹴った爪先が海底にぶつかった。
 このままでは溺れてしまう。久美子は夢中で命綱を手繰った。が、手ごたえは弱かった。まったく身体は持ち上がらない。そして、綱の端まで手繰り寄せてしまった。
 伯母の冷酷な言葉が、頭によみがえった。
「拾うまで、引き上げてやらない」
 でも、まさか――と思う。きっと箱メガネで見守ってくれているはずだ。いよいよとなったら、助けにきてくれる。けれど、見上げても舟影が揺れているだけで、伯母の姿はなかった。
 その舟影が、かすんできた。頭がガンガン痛む。ほんとうに溺れてしまう。絶望が泡になって口から漏れた。大量の泡だけが、海面に向かって浮き上がっていく。
 久美子は恐怖に駆られて海底を蹴った。が、何度水を掻いても、足が海底にぶつかった。
 ゴボゴボボッと、久美子はまた絶望を吐き出した。そのとき。グンッと腰を引っ張られた。鎖が腹に食い込んできた。
 ああ、引き上げてもらえるんだ――安堵が、久美子の意識を奪った。
 気がつくと、久美子は空気の中にいた。腕を後ろへ引っ張られて、背中をゆっくりと何度も押されている。
「ごぼほっ……」
 咳き込んだ久美子の口から、海水が吐き出された。
「まったく手間のかかる子だね。久美子じゃなくてグズ子だよ」
 伯母の鮮やかな海女ぶりを見せつけられているだけに、久美子には帰す言葉がない。
 伯母が櫓を操って舟の向きを変えて、数回漕いだ。
「獲物は舟の真下だよ」
 箱メガネで覗くと、赤い牛乳瓶に手が届きそうだった。
「さ、拾ってきな」
 久美子は、まだ喘いでいる。
「ま……待ってください。もうすこし息を調えさせてください」
「あっちを見てみな」
 百メートルなのか五百メートルなのか、久美子には見当がつかないが。海面から突き出た岩のまわりに小舟が散らばって、そのすぐ近くに白いものが浮かび上がってきて、腕を伸ばして舟に何かを落とし入れているらしい。そして、すぐにまた潜っている。
「潮目の二時間で五十回は潜るんだよ。最初から怠け癖をつけさすわけにはいかないね」
 一回に一分以上潜っているのだから、まさしく休み暇もない重労働だ。けれど、それは年季を積んだ一人前の海女の話だ。初心者が同じことをできるはずもない。しかし久美子は、言い返さなかった。またビンタをもらうだけだ。
 久美子は大急ぎで深呼吸を繰り返した。かえって頭がクラクラしてきたけれど、船べりに腰掛けた。今度は、うまくトンボを切れた。そして、ふと疑問に思った。遠くに見た海女さんは、いちいち舟に上がらずに、その場で潜っていた。たぶん、トンボを切るのは最初だけだろうと、自分で答えを出した。まさか、伯母がわざと難しい所作をさせているとは思いもしなかった。
 今度は、すぐに牛乳瓶を見つけた。それを拾うと、すぐに命綱を引いてもらえた。
「やればできるじゃないか。次は、すこし遠くへ投げるよ」
 久美子は、牛乳瓶が投げられた方角とおよその距離を、頭に刻んだ。
 船べりから手をはなすと、自然に沈んでいく。途中で頭を下にしてから、舟の向きをたしかめ、牛乳瓶の方角へ泳いだ。しかし、見当をつけていたあたりに赤い色は見えなかった。
 海面を仰ぎ見ると、舟はこちらに舳先を向けて、斜め左後ろにいる。方角に間違いはない。久美子は左右を見ながらさらに進み、横へ五メートルほどずらして引き返す。
 しまったなと、思った。たとえば、最初からわざと狙いを右にずらして進んでいたら、左だけを探せばよかった。見つからなければ、うんと左へ移動して、今度も左だけを探せば良い。つぎから、そうしよう。
 船影の真下にたどり着くまでに、息が続かなくなった。どうせ、溺れかけるまで引き上げてもらえないのなら、さっさと息を吐き出してしまおう。そうは思ったけれど、恐くてできなかった。結局、頭痛に襲われて目の前が暗くなって、こらえきれずに息を吐き出して――それでも、腰の鎖は引っ張られなかった。息を吸いたいという思いを必死に押さえ込んで、たすっを求めて舟影を見上げた。
 綱がピインと張って腰に鎖の食い込む感触で――また、久美子は気絶してしまった。
「浮かんでいる舟を目印にするから、こういうことになるんだよ」
 意識を取り戻した久美子を、伯母が叱りつけた。
「落語にもあるじゃないか。渡し船で刀を落としちまった侍が、船べりに目印をつけて、後で拾おうってやつさ」
 そこで、気づいた。前は左前方に見えていた岩が、今は真横に来ている。同じことが、久美子が潜ってから舟影を見上げるまでのあいだにも起きたのだろう。
「おまえは三十秒と息が続かないね。鑑札をもらったばかりの海女でも一分ちょっとは潜るよ。わしが現役だった頃は、三分ちかかったものさ」
 命綱を引いたのは、二回とも四十秒かっきりだったと、伯母が言う。ストップウォッチなんかなくても、ゆっくり数を数えることで、一分で二、三秒しか違わないのだそうだ。
「今日は、これまでにしといてやる。二回も水を吸い込んだからね。肺炎にでもなられたら、ますます物入りだ」
 久美子は鎖をほどかれて、見習海女の褌と伯母が称している晒布を腰に巻いた。いっそ何も身に着けないほうがましだと思うが、仕来りだと言われれば反論もできない。いや、文句を言ったところで、返事はビンタだ。
 帰路は伯母が漕いだ。久美子が三十分かかった距離を、伯母は十分で渡った。
 まっすぐ屋敷へ戻ると、伯母は久美子を残して家へはいった。
「井戸の水で潮を流しな。手桶三杯まで使わせてやるよ」

・強いられた裸生活

 髪と身体を洗って、井戸屋根の梁に掛けてあった煮しめたような手拭いを使っていると、最初に姿を見せた女中が現われた。四十歳くらいかなと、久美子はあらためて観察した。ひっつめ髪のきつい顔で、割烹着姿だった。
「あんたをお医者へ連れてくよう、申し付かったわよ。ついといで」
 久美子に背を向けて、裏木戸へ向かう。
「あの……着替えるまで待ってください」
 女中は鼻で笑った。
「あんた、海女になるんだろ。常日頃から褌一本で暮らすのが、仕来りってもんだよ」
「…………!?」
 久美子は立ちくらみに襲われて、その場に膝を突いた。ひと気のない道を歩いて、同じように(男性だけど)素裸の漁師もいる船着き場まで行くのだって、恥かしさで死んでしまいそうだった。こんな姿で街中へ引き出されるくらいなら、あの鎖を巻いてひとりで海に飛び込んでやる。
「いやです。裸で海に出るくらいが我慢します。でも、でも……」
 久美子は泣きながら訴えたが、感情が高ぶって言葉が出ない。
「京子さん、ちょっと来て」
 女中が勝手口に向かって大声で呼ばわった。ずっと若い女がすぐに出てきた。同じようなひっつめ髪で、やはり着物の上に割烹着姿だった。
「縄を持ってきて。こいつの小屋ん中にあるはずよ」
 京子と呼ばれた若い女中が、久美子にあてがわれた物置小屋から荒縄を取ってきた。
 年配の女中が、泣きじゃくっている久美子の両手を前に引いて、荒縄で手首を縛り合わせた。
「な……なんで、縛るんですか!?」
「決まってるだろ。あんたを医者へ連れてく」
 女中が縄を引っ張ったが、久美子は足を踏ん張って、動こうとしない。
「やれやれだねえ。京子さん、あなたが引っ張てちょうだいな」
 年配の女中が勝手口へ消えて、すぐに長い竹尺を持って戻ってきた。久美子の後ろにまわって、竹尺を尻に叩きつけた。
 ビシャアン!
「きゃあああっ……!」
 思わず前へ逃げる。
「京子さん、ちゃんと引っ張りなさい」
 ごめんねと小さくつぶやいてから、京子が縄を引いた。
 ビシャアン!
 ビシャアン!
 尻を叩かれるたびに、久美子は前へ前へと逃げてしまう。そうして裏木戸から引き出されて、道を歩かされた。
 いや。どれだけ叩かれようと縄を引っ張られようと、逆らって踏みとどまることは、できたかもしれない。けれど、伯母の顔が頭に浮かぶ。『樹から吊るして折檻』という、身の毛もよだつ言葉を思い出す。心をくじかれてしまう。
 このまま、縄で縛られて、お尻を叩かれて引き立てられるくらいなら――久美子は妥協してしまった。
「叩かれなくても歩きます。だから……」
 縄もほどいてくださいと、久美子は訴えた。
 これでは、まるで時代劇の引き回しだ。それはそれで――見る人は、まさかに久美子がそれに値する罪を犯したとは思わないだろう。同情してくれるだろう。けれど、船着き場での出来事を考えると。伯母の威光を恐れて、久美子の味方になってくれる人はいない。
 憐れまれるよりは、むしろ。古来からのしきたりを守って、みずから進んで裸身を晒していると思われたほうが、よほど救われるのではないだろうか。久美子は、そんなふうに自分の心を偽ってしまった。
 そえは、つまり――後年になってSMという概念が認知されるようになってからは、調教とか馴致という言葉で表される心の動きだった。
「ほんとうだね。また逆らうようだったら、女将さんに言いつけるからね。」
 その結果がどうなるかは、わかりきっている。
 久美子は手首の縄をほどかれて。すぐに両手で胸と下腹部を隠そうとしたが、その手を竹雀でピシャリと叩かれた。
「裸が見習海女の仕事着だよ。誇りを持って堂々と歩きなさい」
 久美子は唇を噛み締めて、服を着ていると同じように――も、さすがにできず。下腹部で両手を組んで、歩き始めた。こぼれる涙は、止めようがなかった。
 羞恥と屈辱とに目もくらむ思いでとぼとぼと歩きながら、さまざまな想念が久美子の脳裡をかすめた。
 伯母から聞かされた女中の名前は、花江と京子。ならば、先に立って歩いている年配の女性が花江だろう。見習のあいだは素裸なんて、封建的な戦前でも考えにくい。こんな姿で街中を歩けば、お巡りさんに逮捕されるんじゃないだろうか。
 久美子の懸念は、あっさりと覆された。
 街が近づくにつれて、人の往来も増えてきた。誰もが、驚き呆れて眺めている――ように、久美子には感じられた。けれど、相手のほうが気まずそうに視線をそらす。やはり、島一番の網元の威光は絶大なのだった。それは、駐在勤務の警察官に対してさえも同じらしい。
 港の手前にある駐在所で、久美子は呼び止められた。三十歳くらいの警官だった、
「裸で外を歩くとは……」
 そこで、後ろの花江に気づいて、そちらへ問いかける。
「これは、いったいどうしたことです」
「この子は、見習海女になったんです。一人前になるまでは裸というのが仕来りなのは、駐在さんも御存知でしょう」
 駐在は口を半開きにして花江を見詰め、久美子の裸身に目を転じてはあわててそっぽを向いたり、彼のほうが挙動不審だった。
「あれは、浜崎さんの地所内と漁のときだけに限って黙認しておるだけだ。このように公然と裸で闊歩されては……」
「裸のどこが、いけないんですか」
「公然猥褻罪になる」
「この子の裸のどこが猥褻なんですか?」
 そんなことは子供でもわかる――と、久美子は思ったのだが。
「何年か前の裁判で、下の毛が見えなければ猥褻ではないという判決がありましたわね。だからこの子には、わざわざ剃らせているんです」
 そういう目論見だったのかと、久美子は気づいた。花江の立て板に水は、伯母の入れ知恵だろう。医者は口実で、憎い妹の娘を満天下の笑いものにするのが真の目的だったと――久美子は暗然と悟った。
「いや、それは知っているが……毛よりも猥褻なものが、丸見えですよ」
 ほほほほと、花江が作り笑いをした。
「お股の割れ目は、性器ではありませんわ。女の性器は割れ目の奥に隠れています。奥様をお持ちのくせに、そんなことも御存知ないのですか」
「いや、それは詭弁というもので……」
「これは、女将さんの決められたことです」
 ぴしゃりと言い放つ花江。
「ご自分でお米も野菜も作るおつもりですか。石鹸とか歯磨き粉は、どうなさいますの?」
 網元の威光に逆らうなら村八分にすると、花江はおどしている。皆が皆、網元の支配下にあるわけではないにしても、網元配下の者が買わなければ、店はつぶれる。そして、彼らは本土へ買い出しに行ける足を持っている。
「せめて、外部の者の目には触れぬよう、それだけは、くれぐれもお願いします」
 駐在は、苦虫を噛みつぶしたような顔で、奥へ引っ込んだ。
「つまらないところで時間を取られた。いちいち説明するのも面倒ね。こっからは、わてが先に立ってやるよ」
 竹雀を襟首から着物の後ろに隠して、花江が歩き始めた。あわててついて行く久美子。後ろに目はないけれど、いつ振り返られるかわからない。久美子は、それまでと同様に、羞恥の根源を隠さないように努めた。
 桟橋に、まだ船の姿はない。苦しいことや恥ずかしいことが次々に起こったけれど、まだ朝の十時過ぎなのだ。
 桟橋に面した家並みの大半は、何らかの店になっている。八百屋に肉屋、書店、雑貨屋、薬局、一膳飯屋、自転車店……魚屋だけは見当たらない。
 全裸の久美子に声をかける者はいなかった。割烹着の婦人が浜崎家の女中だと誰もが知っているから、その背後にいる女将さんが恐いのだ。視線だけが、久美子に集中する。男たちの大半は好色な目で裸身を眺めている。それくらい感得できるくらいには、久美子も性長している。女性の目は、三つに分けられた。憐憫、侮蔑、そして敵視。敵視というのは、母の昔の所業のせいかもしれない。
 後藤医院(外科・内科・小児科・産婦人科)と掲げられた看板を通り過ぎて家並みの向こう側まで突き抜けて、右へ折れて坂道を登っていく。緩やかな段々畑の先にある農村まで引き回されて、村長に挨拶させられた。
「網元の浜崎様のお世話になる白石久美子です。自分の食べる分くらいは稼ぎたくて、海女さんになることにしました。見習のあいだは、こんなみっともない格好ですが、どうかお許しください」
 道々考えて、花江に添削された口上だった。
「いやいや。やはり島の娘さんだね。伝統を守ろうとは、殊勝な心掛けじゃわい」
 久美子のことは、あらかじめ教えられていたらしい。とっくに還暦を過ぎた老人は、久美子の乳房と股間との間に視線を往復させながら、久美子に劣らずの挨拶を返したのだった。
 別の道を下って桟橋へ引き返して、それから後藤医院へ連れて行かれた。
 裸の胸にしつこく聴診器を当てられ、乳房を触診までされた。学校の定期健診で慣れて(はいないけれど)いるから、ちょっとしつこないと感じたくらいだった。
「肺の音はきれいだから、問題は無いと思いますよ。念のために抗生物質を出しておきましょう。今日の昼と夜、念のために明日の朝のぶんまで出しておきます」
 帰り際に、窓口でもめた。
「なんだって、こんなに高いんですか。保険証が使えない? 全額負担ですって?」
 久美子は浜崎家の扶養家族になっていない。手続きが間に合わなかったのというよりも、これまでの経緯から考えると、家族に加えるつもりなんかないのだろうと、久美子は屈辱を重ねた。
「まあ、いいわよ。叱られるのは、勝手に溺れた久美子なんだから」
 溺れたくて溺れたんじゃありません――と花江に言っても始まらない。あとで、ますます伯母の勘気をこうむるだけだ。
 ボオオオオー。
「あら、もうこんな時間だわ。おまえが愚図愚図してるからよ。すみません、裏口から出させてもらいますね」
 花江は久美子を走らせた。隠していた竹尺を手に、尻を叩いて追い立てる。
「あ…………!?」
 トンッと足が地に着くたびに、久美子は股間を異様な衝撃が突き抜けるのを感じた。正確には――まだ赤い紐でくくられたままになっている、昨日までは自分でもその存在を知らなかった、小さな肉の突起が、鋭く疼く。痛いのではない。むしろ、甘美とさえいえる衝撃だった。
「もういいよ。ふつうに歩きな」
 遠くから呼ばわれて、久美子は我にかえった。和服を着ている花江が追いつけないほどの速さで駆けていたのだ。
 そのまま走り続けていたい誘惑を投げ捨てて、久美子は速度を落とした。歩くときでも意図的に足を強く踏み下ろせば、同じように甘い衝撃が生じるのだが。久美子は、そうしなかった。この観応が淫らなものだという意識は無かったけれど。ズロースを履いていたら、この突起は揺れなかっただろう。紐で括られていなかったら、刺激は受けなかっただろう。裸を強いられて、しかも恥ずかしい目印を付けられて。それで気持ち良くなるなんて、恥辱でしかなかった。
 医院で予想外の出費があったことには、伯母は何も言わなかった。
「夕方の潮目で、また海に出るよ」
 海女になると言ってしまったからには、きちんと練習をするつもりではいるが。
「学校へは、行かせてもらえないんですか」
 ビンタも覚悟で尋ねた。
「まだ転校の手続きがすんでないんだよ」
 引っ越した当日から通学できる制度になっているなど、久美子は知らない。そういうものかと納得しかけたのだが。
「言っとくけど、海女稼ぎができるようになるまでは、その恰好で暮らすんだからね。学校でも同じだよ」
「…………!」
 学校へ行かさないと言われたも同じだった。むしろ、行かされたらどうしようと、そちらが不安になってきた。
「ああ、そうそう。昼ご飯も恵んでやるけどね。食べ終わったら、小屋から出るんじゃないよ。子供たちが学校から帰って来るからね。そんなみっともない姿を見せたら、教育に良くないからね」
 街中を引き回す口実に、花江は「裸が仕事着」と言っていた。どうせ伯母の受け売りだろうが、今の言葉とは真反対だ。こちらが本音だとは、久美子にも察しはつく。

・亡母の遺骨が人質
・理不尽な折檻甘受
・折檻肌で海女特訓
・ひとりきりで買物
・初潮は新たな恥辱
折檻と輪姦と
・従弟を誘惑した罰
・従弟従姉は釜の味
・独りだけの娘小屋
・Y字バランスの鞭
・海女稼ぎの厳しさ
・娘ひとりに男三人
・不浄期間に猛勉強
学校でも屈辱
・恥辱のセーラー服
・校長室で特別授業
・海女褌で体育授業
・娘宿売春は大盛況
・仄かな官能の兆し
・保健室も地獄部屋
・喪哀妻の快楽地獄
・三穴の絶頂に哭悦
・淫乱娘への灸折檻
・哭逆と諦虐と悦虐
妊娠と流産と
・妊娠中は姦り放題
・厳冬の海女漁強制
・流産と新たな種付
・若過ぎるもやい妻
遥かな後日譚-
・令和に継がれた命
後書き
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 今回は小見出2章分を丸々引用して、読者サービス。迷惑だという声は聞こえません。

「強いられた裸生活」で、ひとりでお買い物に出すつもりでしたが、溺れさせたので、やはり肺水腫とか懸念して医者へ。別に小見出しを立てました。
ブログ用
 表紙絵は今から考えていますが、「裸海女×義務教育生徒」なんて原画は、そうそうないし。ちょっと苦慮しています。上記は初期案です。背景が公園の川なので、もう一工夫します。
 もしもこの表紙絵が某方面でコンテンツガイダンスだったら、性器責めアウトだと確定します。

下のアフィリンクはDLsiteで「SMX工房 ふんどし」をキーワードにしています。

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